I'm dreaming of a white Christmas
僕は夢見ているんだ、ホワイト・クリスマスを

With every Christmas card I write
手書きのクリスマスカードの束を抱えながら

May your days be merry and bright
君の毎日がいつも明るく楽しいものでありますように

And may all your Christmases be white.
君のクリスマスが白銀の輝きとともにありますように
“White Christmas" Bing Crosby

■第九章(1998.December)3■

 いよいよクリスマスが間近に迫り、街は色とりどりのネオンに飾られ華やかな明かりに包まれていた。生まれてこのかた恋人というものにまるで縁のない、僕のような不細工には大変つらい季節がまたやってきてしまった。
 いつものメールの中でミユキの24日の予定を恐る恐る聞いてみたところ、「家で姉とクリスマス会をやる予定」と返ってきた。本当か嘘かは知らないが、どっちにしても僕がミユキとイブを過ごすことができなくなったという事実には変わりなかった。最初から無理だと諦めてはいたが、いざ現実に会えないとわかるとやはり少なからずショックを受けた。クリスマスの存在感というのはやはり大したものだ。

 大学から帰宅してすぐ着替えもせずにメールチェックに取り掛かかると、最近勢いのある中堅日記サイト「ラジカルヘブン」の管理人ワタベさんから「クリスマス殲滅オフのお誘い」という物騒な件名のメールが来ていた。クリスマスイブの夜に男だけで大騒ぎしてカップルに嫌がらせしよう、というような趣旨のひどいオフだった。ただ嫌がらせはともかく「男だけで大騒ぎ」というのは独り身の寂しさを紛らわすのに大変都合が良かったし、主催のワタベさんには一度会ってみたいと思っていたので僕は「参加します」とだけ簡潔に書いて返信しておいた。とそのとき、クボタから電話が入った。

「おい、イブの予定空いとるか? 渋谷のイベントスペースでクリスマスパーティー開くことになったから、来いや」
 渋谷の、イベントスペースで、クリスマスパーティー。
 全てのキーワードが見事に僕の人生に縁のないものばかりだった。さすがモテる男はやることが違う。一言一句がいちいち嫌味ったらしい。
「たった今予定入れちまったばかりだよ」
 僕は本当のことを正直に言った。たとえ予定がなくても、クボタのパーティーなんて金をもらったって行きたくはない。
「ええんか? ミユキも来る言うてたで」
「え?」
 僕は耳を疑った。僕には確かに家でクリスマス会をやる予定だ、と言ったのに。クボタからの誘いとなれば話は別、予定も変更ということなのか。
「夕方に帰る言うてたから、お前も夕方まででええから来い。正直なとこ、俺はミユキの相手するんが面倒や。お前に任せたい」
 夕方で帰る、ということは一応はクボタと会うことより、家族との先約のほうが大事だったということか。僕はほっと胸をなでおろした。
「そういうことならまあ、参加してもいい。俺の用事も夜からだし、ミユキと一緒においとまさせてもらうよ」
「そうしてくれると助かるわ。ほなまた、詳細は後日な」

 昼だけとはいえ、とりあえずイブにミユキといられることになった。クボタも時々は役に立つ。
 やっぱりまだ刺し違えるのはやめておこう。


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