The sun is out, the sky is blue
太陽が昇っている、空は青く澄み渡っている

There's not a cloud to spoil the view
雲一つ無い、見渡す限りの快晴だ

But it's raining,
でも雨が降っている

Raining in my heart.
僕の心に雨は降り続いている
“Raining in my heart" Buddy Holly

■第八章(1998.December)2■


投稿者:ミユキ 12/11 21:28
今回のレビューも素敵でした!
アッシュは私の初恋の人といってもいいかもしれません(笑)
吉田秋生なら私は「櫻の園」が一番好きなんですがユキオさんは読まれましたか?



 何度読み返してみても意図というものがいっこうに見えてこない、妙な書き込みだった。
 もう会わないほうがいい、とミユキは言った。僕はさよならを言って逃げ出した。これは恋愛シミュレーションゲームの常識に照らし合わせたらバッドエンドはまず確定といった、最悪中の最悪と言っていい行動だろう。だから僕はもうミユキのことは忘れようとしたのだ、昔のような漫画だけが友達という暗い自分の巣穴に帰ろうと決めたのだ。 なのにこの、まるで何事もなかったかのような自然体な書き込みはいったい何だ。いまさら僕に何をどうしろというのか。
 もしかして「会わないほうがいい」というのは文字通りに現実で面と向かって会うのをやめて、ネット上だけの交流に戻ろうという意味だったのだろうか? この世の終わりのように深刻に思い悩んでいたのは僕だけで、実はミユキはそんなに深く考えて僕を振ったつもりはなかったのだろうか? でなければこの書き込みは「何もかもなかったことにするから、お前も全部忘れろ」という婉曲な意思表示なのだろうか?
 いや、まずそもそもこの書き込みが「ミユキ本人の手によるものではない」という可能性だってゼロとは言えない。クボタが僕をおちょくる目的でミユキの名前を騙って書いたのかもしれない。もしくはただ単に同じ「ミユキ」というハンドルを使っている別人の女の子が、たまたま絶妙のタイミングで書き込んでくれただけかもしれない。そんな漫画みたいな偶然がありえるとは僕も思っていなかったが、1%でも可能性がある以上は気にしないでいるというわけにもいかなかった。
 色々な可能性が浮かんでは頭を渦巻いていくばかりで、事の真相はまったくわからずじまいのままだった。しかし放置すればするほど意識してしまって返事がしづらくなるだけなので、 仕方なく僕は「櫻の園」も好きですが「河よりも長くゆるやかに」が一番好きです、というような無難な一言だけを書いておいた。
 そして書き込みボタンを押した後、すぐにクボタの携帯に電話を入れた。

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