Unchain my heart 鎖を外してくれ Baby let me go 僕を自由にしてくれ Unchain my heart 僕の心を縛り付けないでくれ Cause you don't love me no more. 君がもう僕を愛していないのなら “Unchain my heart" Ray Charles |
■第六章(1998.Nobember)1■ ミユキからの連絡が途絶えて一週間、久しぶりにメールボックスを開くと数十通のスパムに紛れて「緊急召集」という物騒な件名のメールが届いていた。差出人は「ココノエ白書」という日記サイトを古くから運営している、クエマツさんという人だった。 「緊急召集」 性的な関係を強要? そう言われてみると、心当たりがないではなかった。あの意味不明だったツイスターゲームやら騎馬戦やら3on3やら、全てが最初からそういう目的のために用意されたものだったと思えば合点がいく。 そういえば、細木はあのオフ会の後に何人かに「ホテルで語り合おう」と誘いをかけていた。僕は誘われなかったので何も気にせずそのまま帰ったが、確かアオヤマはついていったはずだった。 心配になってきたのですぐアオヤマに電話を入れた。 「ああ、ボクのところにも来たよ、クエマツさんからのメール」 アオヤマが寝起き直後のような抑揚のない不機嫌な声で言った。「ボクも戦うつもりだよ、あの細木とは」 「えっ、アオヤマ、まさかお前…」 「なにも言わないで」アオヤマが決然と言った。「ユキオには関係ないから。これはボクの戦いだ」 ますます何があったのか気になったが、アオヤマの気迫に気圧された僕はそれ以上何も訊けずにそのまま静かに電話を切った。 僕は細木のことなどどうでもいいといえばどうでもよかったのだが、レビューで自分のサイトを貶されたことについては正直なところむかついていたし、そしてアオヤマが戦うと言っている以上は友人として協力してやろうという気持ちもあった。 僕はクエマツさんに「参加します」と返信しておいた。 |