Unchain my heart
鎖を外してくれ

Baby let me go
僕を自由にしてくれ

Unchain my heart
僕の心を縛り付けないでくれ

Cause you don't love me no more.
君がもう僕を愛していないのなら
“Unchain my heart" Ray Charles

■第六章(1998.Nobember)1■

 ミユキからの連絡が途絶えて一週間、久しぶりにメールボックスを開くと数十通のスパムに紛れて「緊急召集」という物騒な件名のメールが届いていた。差出人は「ココノエ白書」という日記サイトを古くから運営している、クエマツさんという人だった。


「緊急召集」
※このメールは過去、「細木の部屋」のオフ会に参加されたことのあるかた全員にBCCで送信しています

 「ココノエ白書」というホームページの管理人、クエマツと申します。突然のメール失礼致します。
 皆様ご存知の通り、「細木の部屋」管理人・細木太志という男は絶大なる権力を盾に男性管理人を集めては性的な関係を強要している、ゲイの風上にもおけぬ極悪人であります。ついてはその巨悪を我々の手により断罪せしめんがため、被害者一同による作戦会議を開きたいと考えています。
 第三回の日時と会場は11/21、13:00より渋谷区勤労福祉会館第2洋室になります。これ以上の犠牲者を増やさぬためにも、ぜひ皆様のお力添えをお願いしたい次第です。 ご参加お待ちしております。

 性的な関係を強要?
 そう言われてみると、心当たりがないではなかった。あの意味不明だったツイスターゲームやら騎馬戦やら3on3やら、全てが最初からそういう目的のために用意されたものだったと思えば合点がいく。
 そういえば、細木はあのオフ会の後に何人かに「ホテルで語り合おう」と誘いをかけていた。僕は誘われなかったので何も気にせずそのまま帰ったが、確かアオヤマはついていったはずだった。
 心配になってきたのですぐアオヤマに電話を入れた。

「ああ、ボクのところにも来たよ、クエマツさんからのメール」
 アオヤマが寝起き直後のような抑揚のない不機嫌な声で言った。「ボクも戦うつもりだよ、あの細木とは」
「えっ、アオヤマ、まさかお前…」
「なにも言わないで」アオヤマが決然と言った。「ユキオには関係ないから。これはボクの戦いだ」
 ますます何があったのか気になったが、アオヤマの気迫に気圧された僕はそれ以上何も訊けずにそのまま静かに電話を切った。

 僕は細木のことなどどうでもいいといえばどうでもよかったのだが、レビューで自分のサイトを貶されたことについては正直なところむかついていたし、そしてアオヤマが戦うと言っている以上は友人として協力してやろうという気持ちもあった。
 僕はクエマツさんに「参加します」と返信しておいた。

→次へ
←表紙に戻る