Still I'm waiting for the morning
僕はまだ、朝が来るのを待ち続けている

But it feels so far away
でもそれはどこかずっと遠くにあるように感じるよ

And you don't need the love I'm giving
君が僕の愛を必要としてくれないから

So tomorrow is today.
だからそう、明日も今日と何も変わりはしないのさ
“Tomorrow is today" Billy Joel

■第五章(1998.Nobember)4■

「うまく伝えるのが難しいんだけど」
 ミユキは言葉を選びながらゆっくりと話し出した。
「ユキオ君のことは好きだよ。今のわたしにとって、一番大切な友達だもん。ほんとに、わたしなんかと一緒にいてくれてありがとうって、いつも思ってる。でも」
 ミユキが一度言葉を区切り、目を閉じた。僕は死んだ金魚のようにだらしなく口を開けたままそれを見ていた。事前の計画ではこの流れになったらすかさず冗談冗談、と茶々を入れることにしていたはずだった。だがいざ本番を迎えてそんなことのできる余裕なんて、よく考えてみたら僕にあるはずがなかった。

「でもうれしいと思う気持ちと同じくらい大きく、わたしの心には罪悪感も生まれるの。今日もユキオ君の大事な時間をわたしなんかのために使わせてしまった、申し訳ないって。 ユキオ君は本当はわたしなんかの御守りをしている場合じゃないのに、って」
「御守りなんてつもりで一緒にいるわけじゃない」僕はすぐさま反論した。
「もちろん、それはわかってるよ」ミユキが寂しく笑った。
「ユキオ君のせいじゃないの。これはわたしの問題。わたしが障害者であることが問題」
 僕はまた反論しようとしたが、先にミユキが喋り出した。
「クボタさんはほら、女の子のあしらい方が上手いでしょ? 相手を本気にさせないように上手く距離を取りながら、恋愛の楽しい部分だけを見せてくれる。 わたしにはそれが楽なの。それくらいの幸せが、わたしには分相応なの。彼女になりたいなんて大それたことは思わない。ただ時々会って遊んだりしてくれるだけでいいの、それ以上のことはほんとに何も望んでないの。だからユキオ君とそういう関係になれるなら、わたしはすごく幸せだと思った。でもユキオ君がわたしにそれ以上の関係を望んでしまうのなら、今の友達って距離のままでいられないのなら」



「わたしたち、もう会わないほうがいいと思う」



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