Would you hold my hand if I saw you in heaven?
もしも天国で会えたなら、君は僕の手を握ってくれるかな

Would you help me stand if I saw you in heaven?
僕が立ち上がるために力を貸してくれるかな

I'll find my way through night and day
でもいつか僕はすべてを乗り越えて、
自分の道を見つけてみせるよ


'cause I know I just can't stay here in heaven.
だって僕は天国になんていられるような男じゃないから
“Tears in Heaven" Eric Clapton

■第十九章(1999.February)3■

 携帯を鳴らすまでもなく、ミユキの姉は改札を出た瞬間すぐに見分けがついた。姉はミユキよりずっと背が高く髪が短かったが、温和な瞳の雰囲気が良く似ていた。
 ミユキの姉はすぐ僕の視線に気づき、「ユキオさんですね? お忙しいところわざわざすみません」と走り寄ってきた。
「いえ、お気になさらず。こちらこそご連絡いただきありがとうございます」と僕は頭を下げた。
「それより遺品ってなんでしょうかね? 僕のほうには全然、心当たりがないんですが」
「その件ですが」
 ミユキの姉は辺りをきょろきょろと見回した。その仕草もまたミユキにとてもよく似ていて、僕の心はまたざわついた。
「少し長い話になりそうなんです。コーヒー代くらいは私が出しますから、よかったらどこか入りませんか?」
「いえ、僕はここで大丈夫ですから」
 僕は慌てて手を振った。店になんて入ったら簡単には逃げられなくなる。ミユキの思い出話なんて、今の僕には拷問に等しいのだ。できたら話も聞かずに荷物だけ受け取ってそのまま退散したかった。
「そうですか…では」
 ミユキの姉は残念そうに言った。「できるだけ短い話にまとめさせていただきます。まずは先に物を渡しておいたほうがいいですね。これです。受け取ってください」
 ミユキの姉は僕に紙袋を手渡してきた。袋は文庫本が一冊やっと入るくらいの、予想よりずっと小さいものだった。
 僕は無言のまま、許可も取らずに中身を取り出した。
 中には片方だけの、毛糸の手袋が入っていた。ざっくりとした太い濃紺の毛糸で編まれた、暖かそうな手袋だった。
 左手側に当たるもう片方の分は入っていなかった。どこかに引っかかって隠れているのかとさらに袋の中をまさぐると、固い感触があった。取り出してみると、それはハートの絵が描かれた名刺大のメッセージカードだった。
 そこにはこう書かれていた。









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