Baby, the truth is out so don't deny
真実は明るみにされたってのに、今さら否定したってもう遅いのさ

Baby to think I believed all your lies
僕が君の嘘を全部信じてたって、君が思い込んでたことをね
“Gotta get away" The Rolling Stones

■第十四章(1999.January)3■

 エビス君の相談が思ったより早く片付いたので、僕らはゲームやらネットやらのどうでもいい話で盛り上がり無為に時間を浪費した。 アオヤマがことあるごとにPCを分解されることの文句を言ってきたが、僕は完膚なきまでに無視した。
「しかしユキオさんは凄いですね。あんなにスラスラと嘘のごまかし方が出てくるなんて」
 エビス君がうんうんと頷きながら言った。「さぞかし数多くの女の子を落としてきたんでしょうね」
「一人も落としてねえよ」と僕は答えた。謙遜とか照れ隠しとかでなく、本当のことだから悲しくなる。
「でもなんか、狙ってる女の子がいるとか。アオヤマさんから聞きましたよ」
「ああ…まあね」と僕は小声で言った。「狙ってるだけで、弾は全然当たってないけどね」
「いやいや、ユキオさんなら楽勝ですって。それだけ口が上手いんですから」
 何か僕が普段嘘をついては誤魔化してばかりいるように聞こえるが、反論するのも面倒だったので黙っていることにした。
「でもまあこれでなんとかなりそうで、よかったじゃないエビス君」とアオヤマが言った。
「はい! 全部アオヤマさんとユキオさんのおかげです」エビス君は満面の笑みを浮かべていた。
「上手くいくといいな」と僕は言った。
「ユキオさんの方も、上手くいくといいですね」
「お互いにね」と僕は苦笑いした。そもそも恋愛相談を持ち掛けたくなるようなややこしい状況なのは、僕も同じだったのだ。それが何の因果かこうして人の相談に乗って 、一丁前にアドバイスすることになるなんて。本当に皮肉なものだ。
 でもエビス君がこんな僕を頼ってくれたこと自体は、僕としても嬉しいことだった。せっかく助言したからには上手くいってくれなきゃこっちも無駄骨になってしまう。それにエビス君を幸せにすることで僕自身にも何か神様から幸運の見返りが貰えるのではないか、なんてやましい打算がないこともなかった。

「今日は本当にありがとうございました。ご恩はきっと忘れません」
 エビス君は深々と頭を下げた。

 次の日曜日、エビス君から僕宛てにメールが届いていた。


 「やりました!」
 彼女に会って、全部正直に告白して謝ってきました。
 彼女は笑って許してくれて、デートの後で無事に付き合おうという話になりました。
 せっかくユキオさんにいろいろアドバイスもらったのに、活かせなくてごめんなさい。でもいま僕のこの幸せがあるのは全部、ユキオさんに励ましてもらえたおかげだと思ってます!
 本当にありがとうございました。今度彼女を紹介しますので、どこか一緒に遊びに行きましょう。それでは。



 もう二度と他人の恋愛相談には乗るまい。僕はそう心に誓った。


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