Being here with you feels so right
君と一緒にいるだけで、全てがうまくいく気がするよ

We could live forever tonight
僕らは永遠にこんな素敵な夜を過ごしていけるんだ

Lets not think about tomorrow
明日のことなんて何も考えなくていい

And don't talk, put your head on my shoulder.
何も言わないで、今はただ僕の肩に頭を預けて
“Don't Talk (put your head on my shoulder) " The Beach Boys

■第十三章(1999.January)4■

「クボタのことは今度、君の分まで僕が殴っておくよ」
 僕はやがて口を開いた。「僕にもあいつを殴らなきゃいけない理由がある」
「だめ」
 ミユキはテーブルに臥せったまま言った。
「そんなことはしないで。二人が仲違いするのを見るのは、振られるよりもっと悲しいよ」
 でも僕だって悲しいんだ。そう言い返したかったが、それは黙っておいた。
 クボタは友達の女に手をつけるという、やってはならないことをした。僕はそれを許すつもりはない。実質的に僕とクボタの間の友情はもう終わりだった。 なのにミユキのために、これから僕はクボタとしたくもない仲直りをしないといけなくなった。すでに終わっている関係を、終わっていないように繕い見せかけ続けなければならなくなった。でもそんなことは何でもないことだ。それでミユキが笑ってくれるというのならば。

「クボタさんのことは」
 ミユキがようやく顔を起こした。目は真っ赤に充血し、流れたマスカラが頬に黒い跡を残していた。
「わたしが自分で決着つけるよ。どっちにしてもこんなモヤモヤした気持ち引きずったままで、もう気軽に会って遊んだりなんてできそうにないから」
「決着、って?」と僕は訊いた。
「ちゃんと告白して、ちゃんと振られてくる。振られた上で、あらためてただの女友達にしてもらえるか、聞いてみる。もしかしたら友達としても会ってもらえなくなるかもしれないし、わたしの気持ちのほうがつらくて会えなくなるかもしれない。でも」
 ミユキは目を閉じて少し間を取って、ひとつ小さな深呼吸を入れた。
「クボタさんへの思いに一度けじめをつけた後で、ゆっくり考え直してみたいんだ。自分がこれからどうしたいのか。自分にとって本当に大切なものはなんなのか。だからこんなことを言うのは虫のいい話だってわかってるけど、 もしユキオ君が許してくれるなら、ユキオ君がまだこんなわたしのことを好きでいてくれるなら」


「もう少し、待っていてほしいの。わたしが、わたしの問題に決着をつけられるまで」


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