May your heart always be joyful 君の心がいつも喜びに満ちあふれていますように May your song always be sung 君の歌がいつも歌われていますように May you stay forever young 君がいつまでも若くいられますように Forever young, forever young, いつまでも若く、永遠に若く May you stay forever young. 君がいつまでも若くいられますように “Forever Young" Bob Dylan |
■第十一章(1999.January)1■ 1999年で世界は終わってしまうのだと、子供の頃に誰かが言っていた。 それを聞いた僕は「じゃあ、今からなにか頑張っても無駄なんじゃん。どうせ大人になる前に死んでしまうなら、今好きなことして遊んで暮らしたほうがいいに決まってんじゃん」という子供らしからぬ醒めた解釈をし、その方針通りにおよそ努力というものをしない怠惰な少年時代を過ごしてきた。その結果が、これだ。まさか本当に1999年がリアルに僕の前にやってきて、 何も為さずに大人になることのツケをまとめて払わされる羽目になるなんてこと、幼い僕には想像することができなかったのだ。そしてとうとう迎えたこの地球最後の年の始まりを、僕は高熱にうなされ布団の中で迎えていた。体温計の数値は39.6℃。地球の命運以前に、僕が一足早く最後を迎えかねないひどい風邪だった。 それでも電脳世界の動向だけはどうしても気になり、僕は霞む目を気合いで見開きネットに繋いだ。 さっそくミユキから年賀メールが届いていた。 「謹賀新年」 なんの変哲もないその挨拶メールを、僕は百回ぐらい読み返した。どんな風邪薬よりもミユキの温かい言葉が一番身体に染みて効く気がした。 「Re:謹賀新年」 送信ボタンを押してから三十分くらいでもうミユキからメールが返ってきた。ミユキも暇なのだと思うと少しおかしくなった。 「ネット禁止!(笑)」 その下に並んでいたのは「par-a-noi-a」「スワップファイルズ」「絶望の世界」といった、最近できて注目を集め始めていたテキストサイトのURLの数々だった。半分くらいは僕も知っていたが、半分は名前を見るのも初めてというサイトばかりだった。いったいミユキはどこからこういうのを見つけてくるのか。漫画読みとしての力量だけでなく、ネットサーファーとしてのアンテナの高さまでも僕はミユキの後塵を拝しているようだった。 ミユキの紹介してくれたサイトを見て回りながら、ついでにアオヤマのサイトを開いてみた。最後の更新は12/20で止まっていた。年が明けてもあけましておめでとうの一言の更新もなく、掲示板に溢れている書き込みに返事をつける気配も見えなかった。 アオヤマは大手になって驕ってしまった、という批判が囁かれはじめているのを僕は知っていた。友人としてはそんな声を無視して恋を応援してやりたい、とも思うのだが…アオヤマの場合はどうもその恋が今のところ良い方向に向かっていないようなので、心配にもなる。ミカは決して悪い女の子ではないと思うのだが、良くも悪くもいまどきの女子高生なのだ。元々がアオヤマの手に負える相手ではないことだけは、明らかだった。 |