深夜3時半の僕の部屋の玄関は当然明かりが消えていた。僕はまるで盗人が進入する時のように、物音を立てぬようそっとドアノブを回す。 狭い廊下を静かに静かに猫足で歩く。何が怖いって、睡眠を阻害された時の君ほど恐いものはない。僕は君を起こしてしまわないように、電気もつけずに暗がりの中で着替え始めた。 晩ご飯には帰る、という約束をまたもや反故にして麻雀に狂っていた僕。これで何度目かわからない。きっと明日の朝また怒られるんだろうな、と思うと気が重かった。 奥の部屋からは気持ちよさそうな君の寝息が聞こえる。 ほー、ほー、という独特の寝息はまるで夜の森で鳴くみみずくみたいだ。と昔言ったら、しばらくの間僕より先には眠らなくなったっけ。別に恥ずかしがることないのにね。 ねえ、僕は眠れぬ夜、よく君の寝息に耳を澄ますんだ。 目を閉じた暗闇の中、絶え間なく聞こえるみみずくみたいな君の寝息は今ここに君が生きて呼吸していることをはっきりと教えてくれるから。樹海の切れ間から差す一筋の月光のように僕を導いてくれるから。僕は子守歌を聞かされた赤子のように、たちまちのうちに眠りについてしまうんだ。 明日、僕は君に何回目の「ごめんなさい」を言うんだろう。どんな言い訳をすれば、君は笑って許してくれるんだろう。 いろいろ考えてはみるけれど、どうにもいい手は思い浮かばない。だから、今日はもうさっさと寝てしまおう。夜がまだ残っているうちに。君の寝息が続いているうちに。 君の寝息はまるで夜の森で鳴くみみずくみたいだ。 |