第十一回
「テレビ中毒と君の悪趣味」

  そもそも、テレビというものの存在自体があまり好きじゃない。だから僕はテレビをほとんど見ない。
  だけど君は三度の飯よりテレビが好きで、猛烈くだらないトレンディドラマだのナマダラだのアサヤンだのに毎回釘付けになっている。そんじょそこらの女子高生よりタチが悪い。
  それでいて、番組が終わると君はいつも「ねえ、『モー娘。』の石黒とかいっていなくなって正解だよねー」などと出演者の悪口ばかり言う。知るかっつーの。
  今日もなんだか新しく始まったとかいうドラマを見た後、ジャニーズの誰だかの演技がいかにダメかについてを延々と熱く語っていた。そんなこと聞かされても、僕は最近のジャニーズ勢の名前なんて誰一人わからない。
「とにかく、あたし昔からジャニーズ系の男って好きになれないのよ」と君はまだくどくどと続ける。
「ふうん」と僕は気のない返事をする。「女の子ってのはみんな女子高生くらいの頃はジャニーズにのぼせあがるもんだと思ってた」
  あはは、と君は笑った。「ま、たいていの女の子は一度はのぼせるもんなんじゃない?友達の間ではあたし変人扱いされてたから」
「趣味が悪いって?」と僕は言った。
「うん」と君は頷いた。

「でも、当たってるから何にも言えないよね。
よりにもよって、ユキオ君なんて好きになっちゃうくらいだもんね」

  どういう意味だよ、と僕は君の頭をこつんとこづいた。君はごめんごめん、と笑いながら台所へと逃げて行った。


  趣味が悪い、か。確かにその通りだよなぁ。僕はぽりぽりと頭を掻いた。
  でもそのおかげで僕は今こうして君としあわせに暮らせているんだとしたら、ま、いっか。ブサイクでもいいや。君がそれでいいってんならね。



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