第六回「潮騒」
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少女は二三歩退いた。出口はなかった。コンクリートの煤けた壁が少女の背中に触った。 三島という小説家については僕ははっきり言うと大嫌いなのだが(名前が「ユキオ」なのも個人的にむかつく)、作者がどうこうという話はこの企画とは直接関係ないのでばっさり割愛。ここでは「潮騒」の萌えを簡潔に解説することだけに専念しよう。 「潮騒」というくらいだから舞台は当然海。主人公は漁師の青年・新治、ヒロインは海女の少女・初江。まあ色々あって二人は惹かれ始め、嵐の日に廃墟の中で裸になって焚き火に当たる上の場面に遭遇するわけだ。この時の初江たんの裸の美しさを描写する三島先生のこだわりっぷりが凄い。オッパイの魅力を文章で語らせたら右に出る者はいないのではないか、というほどにオッパイにこだわっている。後に出てくるこの一連の初江のオッパイ描写を読んでみるといい。 それは決して男を知った乳房ではなく、まだやっと綻びかけたばかりで、それが一たん花をひらいたらどんなに美しかろうと思われる胸なのである。 僕もオッパイについてはそれなりに強い思い入れはあるが、ここまで見事に饒舌に魅力を語りきる自信はさすがにない。よく言ってくれた三島先生、というより他に言葉がない。まあ三島先生は女のオッパイだけが好きというわけではなく、マッチョの肉体美なんかも愛してらっしゃったようなのだがそれはどうでもいい。とにかく今はオッパイだ。オッパイマンセーだ。 で、焚き火のシーンに話を戻す。新治がにじり寄ろうとすると、裸の初江はそれに合わせて炎をへだてて逃げる。汝も裸になれ、そしたら恥ずかしくないから、と言って初江は新治にも裸になることを要求する。そしていよいよ後がなくなって最後に言うのだ、「その火を飛び越して来い。その火を飛び越してきたら」。そして新治は炎を飛び越し初江を捕まえ、抱きしめる。このシーンはあまりにも美しく、あまりにも文学的で、そしてあまりにも萌えだ。「その火を飛び越して来たら」、とあえて中途半端な形で台詞が切れているところも深い。その後に続くはずだった言葉は何なのだろう、と思わず考えさせられてしまう。この台詞についてはいろいろな解釈が許され、いろいろな萌え方が許されそうだ。 でまあ裸になって抱きしめ合ったのだから、その後は当然エッチな展開が待っているはず…とわくわくして読み進めると、なんとヘタレの新治は初江の「今はいかん。あんたの嫁さんになることに決めたから、それまではいかん」という言葉を真に受けて続きをやめてしまうのである! なんだよ寸止め!? おいおい結局ラブひななのかよ!
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