Walk on through the wind
風の中を歩いていくんだ

Walk on through the rain
雨の中を歩いていくんだ

Though your dreams be tossed and blown.
たとえ君のその夢が嵐に吹き揺らされようとも
"You'll never walk alone" Gerry & The Pacemakers

■最終章(1999.March)6■

 ねえ、ミユキ。
 僕はやがて立ち上がり呟いた。


 僕はもう一度だけ、テキストサイトをやり直してみようと思うんだ。
 これまで僕はただ漫然と、自己満足のためだけにサイトをやっていた。それだけで充分だとずっと思ってた。でも君を失いクボタをアオヤマを失い絶望の底まで転がり落ちた僕の頭上に、今までは見えなかった別の目的がもう一つ、だんだん見えてきた気がしたんだ。それは君の言葉を借りるならつまり、こういうこと。

 僕は誰かの屋根になりたい。


 僕は見上げてもらえなくともいい。愛してもらえなくともいい。
 僕の書く文章が、僕の作ったテキストサイトが誰かの目にとまり笑ってもらえるなら、誰かの心を優しい気持ちに変えることができるなら。それだけで僕はこの世界にとどまる意味をもう一度取り戻すことができる。 君のことを、大切な友達のことを守れなかった僕の罪を、少しずつ償っていける。そう思うんだ。
 君ならきっと、賛成してくれるよね。応援してくれるよね。

 さよなら、ミユキ。向こうでは今度こそ幸せになれるといいね。
 僕はここで、君のいないこの世界で、もう少しだけ頑張ってみるよ。







 ――――スノードロップの花言葉はね。
 墓石に背を向け歩き始めた僕は、木々のざわめきの中に確かにミユキの声を聴いた。                                                                                                                    


 「希望」、っていうのよ。


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