さくらとちぃのテキストサイト論vol.9

「シャイシャイシャイシャイ!!!(挨拶) さくらです!
いよいよ最終回だコノヤロー!! 最後ということもあってかすごい数のメールが届いているので、さっそく紹介していくよ! 最後だからわりと真面目に答えてみるね。
現実の知り合いにサイトを持っていることが知られたせいで、文章の内容について学校でいろいろと口を出されています。この際思い切ってやめてしまおうかとも考えているのですが、それだとサイト関連で出来た縁もそのまま切れてしまうため思い悩んでおります。何か良い方法はないものでしょうか』
ハンドルネーム『masa』さんです。ありがとうございます」
「サイトばれ、ちぃもこわい」
「あたしもねー、旧サイトで露出写真あげてたのが小学校にバレて職員会議にかけられた経験があるだけに、サイトばれに関しては強気なこと言えないのよね。バレても平気か問題は内容次第なんだけど、このmasaさんのサイトをさっきちょっと見てきたらさくらたん(;´Д`)ハァハァとか言ってたわ。これはちょっと…」
「さくら、相変わらずモテモテ」
「ロリオタにモテても全然嬉しくないって言ってるでしょ!!
でもさ、このmasaさんはまだ中学生って言ってるからなぁ。社会人が会社にバレたらかなり問題だけど、友達にバレるくらいならそんなに気にすることはないと思うよ。もうちょっと様子見て友達以外のリアル人間関係にも影響が出そうな気配なら一回閉鎖したほうがいいかな。どうしても関係続けたい人にだけメールしてひっそり移転再開すれば?」
「それ、さくらが昔使った手」
「いいじゃない過去なんかどうだって! 大事なのは今よ!!
気を取り直して次行くわね。
初めまして。都内で作家兼編集者をやっている者です。実は、2年前から読者サービスを兼ねて、没原稿を中心としたサイトを運営しているのですが、購買者と目される男性よりも、女性の来訪者の数が増えて困惑しております。おまけに、そのことで「釣り堀、ハーレム」と、周囲から陰口を叩かれる始末です。男性のヒット数を増やす方法を教えていただけないでしょうか?』
ハンドルネーム『鳥山仁』さんからです。ありがとうございます」
「鳥山先生のH小説、ちぃも読んだ。ちぃハァハァ」
「パソコンのくせに一丁前にハァハァできんのかよ。まあいいわ、あたしの知り合いのM娘にも小説の場所教えてあげたら確かに『ハァハァした、ありがとう』と感想言ってたわ。文体的に女の子にも入っていきやすいんでしょうね、女性ファンがつくのはわかるわ。でも問題はビデオ屋のエロコーナー入り口と一緒で、女の子がたくさんいると男は入っていきづらいということなのよね。これは難しい問題かもねぇ。来てくれてる女の子に責任はまるでないんだし」
「どうしたらいい?」
「うーん、基本的にはどうもしなくていいと思うけど。客に女の子が多いのは受けが良くて面白いサイトであるという証拠でもあるわけだし。まああんまり男女比のバランスが崩れるようだと不本意だろうし周りのやっかみも激しくなるだろうし、微調整はしておくに越したことはないけど。女性比を下げて男性比を上げたいなら例えばトップページをもっとモロにエロく怪しくするとか」
「ちぃエロい画像あると見れない。親にバレちゃう」
「パソコンのくせに親いんのかよ。まあいいわ、少なくともこういうちぃちゃんみたいな気合いの入ってないフツーの娘はシャットアウトできるよね。逆に濃いエロを求める男子はトップ画像の危険な匂いにつられて来てくれそうよね。このように客層をコントロールするために店構えに凝るのも管理人のやり甲斐ある仕事の一つだと思うのよ。なかなか時間が取れないのはわかるけど、理想を言えばサイト構成というのはショップと同じで、雰囲気をターゲット層の嗜好に合わせて少しずつリニューアルして進化していくべきものだと思うのよね。いくら並んでいる商品(コンテンツ)に自信があってもターゲットとする層に正しく展示できなければなかなか売れない、ってことね。ま、こんなことは本職編集者なら言うまでもなくわかってることだと思うけど」
「でも、ちぃもエロ小説でハァハァしたい…」
「うるさいわね! いいのよあんたはハァハァしなくって!!
じゃあ次の質問にいきます。
私はテキスト系の個人サイトを細々と続けています。アクセス数は毎日100弱くらいの小さいサイトです。もちろんそれなりに自己満足しているのですが、 私が女性なので文章を書いても女性が共感するばかりで、もっと男性が興味をもってくれるようなサイトを目指したいのです。 おそらくHな画像でも掲載すれば、 簡単にアクセス数はアップするのでしょうが、もうちょっと違った観点でアプローチしたいのです。男性が女性個人サイトに求めていることややって欲しいこと、興味のもてることって一体なんなのでしょうか? 』
ハンドルネーム『すわん』さんからです。ありがとうございます」
「男が女のサイトに求めてること、ちぃも興味ある」
「そんなのエロに決まってるじゃない。女がエロをやったら男が群がる、そんなことは雨が降ったら水たまりができるくらい自明のことなのよ。それをやるかやらないかはもちろん個人の自由よ。でもあたしに言わせるとさ、男が求めてることを気にしながらやるという姿勢はすでに間違ってるよ。要は女特有のおしゃべり感覚の無方向テキストを控えて、万人向けを目指せばいいだけの話じゃない? 男の視線を気にしすぎるとどうしても媚びが入ってくるのよ。媚びで男に人気のサイトになったところで、食べ頃に太ってくるのを見計らっていたピラニアのような2ちゃんねらーどもが掲示板に襲いかかってくるだけだよ」
「でも、女の子のサイトだからこその味、というのはないの?」
「サイトイメージに純粋さや優しさを持ち込みやすい、というのはあるかもしれない。男がやるとキモいことが女なら許される、ってことね。媚びのない素直な女の子らしさならさすがの2ちゃんねらーだって好感を持ってくれるだろうし、武器にできるなら武器にしてみてもいいんじゃないかな。それと逆にそういう乙女の純粋さを前フリに利用しつつ最後は本音の下品さの落差で笑わせる、みたいなpopoiさんとかが得意にしてるパターンも男には絶対真似できない見事な技だと思うよ。参考にしてみるのもいいかも。
ま、でもとりあえずすわんさんにはそんな気負わないで今のまま自然体でやってほしいな。自然体でやってそれが男に好まれないタイプの文章なら、それはもう仕方ないよ。納得できる範囲以上のスタイルチェンジはしないことね。だって、自分がやりたくないことをしてそれで客が来たって嬉しくもなんともないじゃない」
「う、さくらの言ってること、ちょっとちぃにも刺さる…」
「ちぃちゃんこそやりたくない裏技使いまくって成り上がった典型だからね!
てことで、後がつかえてるんで次に行こうか。
世の中は確実にブロードバンド世代へと移行しつつあるわけで、ムービーを多様した誰の目にも解りやすいビジュアルサイトが今後もてはやされる可能性大です。テキストサイトはこのような時代のうねりの中で洪水で埋没してしまったメソポタミア文明よろしく、その文化のエピローグを迎えてしまうのでしょうか? 』
ハンドルネーム『大神少尉』さんからです。他の方々からも数通、テキストサイトの未来に関するメールをいただきました。皆さんありがとうございます」
「インターネットの時間、早い。未来、ちぃちょっと予想できない」
「そうだね。でもとりあえず確実に言えることは、これからネットはどんどん高速化が進み料金が下がり、いずれは電話と同じように一家庭一回線規模で当たり前に普及するようになるということよね。そのときムービーやフラッシュなんかを多用したビジュアル面で優れたサイトがもてはやされるのは100%間違いないとしても、そのとき果たして『文章だけのテキストサイト界』はどう姿を変えていくのか。これははっきり言ってそのときになってみないとわからないよね。ただ、数が減っていくことはないとあたしは思うわ。自己顕示欲は全ての人間にあるわけで、ネットが普及すれば普及しただけお手軽自己表現の手段としてのテキストサイトの数は爆発的に増える、それはたぶん間違いないことだと思うの。問題は、誰がゴミの山の中から面白いサイトを拾ってくるのか、よね。現状ですら愛蔵太さんは侍魂バブルに疲れて発掘を半分放棄している状態よ。あまりのジャンクの多さに面白い新サイトが完全に埋もれて誰も見つけられなくなったとき、今あるようなテキストサイト文化は新陳代謝機能を失いあえなく窒息死するでしょうね。最後に残るのは夢の島みたいなゴミの山だけ、兵どもが夢の跡ということになる可能性はかなり高いかもしれないわ」
「わ、さくら小学生のくせに難しいこと喋ってる。新陳代謝だって」
「うるさいわね、どうせ国語のテストでは書けないわよ!
とにかくそう新陳代謝、これからのテキストサイト界にはそれを促すための器官が絶対に必要になってくるわけよ。公正な目で面白い新サイトをジャンクの中から拾ってくるという作業をやってくれる器官が。今のニュース系サイトブームもその『情報選別』がこれからの時代重要になるという大きな流れの中で必然的に起こったもののはずだし、彼らの中から早くそういう面倒なテキストサイト選別作業を専門で引き受けてくれるところがいくつも現れてくれるといいなとあたしは思ってるの。というより彼らがそれを引き受けてくれるかくれないかでテキストサイト文化の命運は決まる、とまで思ってるわ」
「さくら、人が変わったみたい」
「最終回だからね! ちょっと知的なことも言ってみたくなるのよ。ほら、モテたければ意外性を演出しろって以前教えたでしょ? アレよアレ。じゃあ最後のメールに行くね。
大手サイトっていうのは何でしょうね。定義ってないと思いますが。さくらさんのお考えをお教えください』
ハンドルネーム『天羅』さんからです。ありがとうございます」
「大手は大手。人がいっぱい来るところ。アクセス数があるところ」
「それがあたしが今までちぃちゃんに教えてきたことだよね。でも あたしの本当の考えは違うのよ。客の期待度が大きくて、与えてくれる満足度が大きいところ。それが本当の意味での大手サイトだとあたしは思っているわ」
「ちぃ、たくさんの客に期待されてる。でも、ちぃが満足を与えてる自信ない…」
「だんだんつらくなってきた? それも大手の宿命なのよ。そのつらさをどう克服するかも大手になったからには嫌でも考えていかないとね。
じゃあ、これが本当に最後の質問。
あなたにとってテキストサイトって、何ですか?』
質問者はあたし。あたしからちぃちゃんに、最後の質問よ」
「ちぃにとってのテキストサイト…?」
「そう、ちぃちゃんにとってのテキストサイトだよ。ちぃちゃんはそもそも何のためにサイトを始めて、そしてこれから何を求めてサイトを続けるの?」
「ちぃ、そもそもは自分が楽しむためにサイト始めた。あの頃は誰も見てなかったから好き勝手書けたし、すごく楽しかった。
でもそのうちそれじゃ物足りなくなった。もっとたくさんの人に見てもらいたい、と思うようになった。さくらが教えてくれたありとあらゆる汚い手を実践した。結果、今では一日5万ヒットサイトの管理人になれた。男も喰いたいだけ喰えた。
でもちぃ、もうわからない。『大手になってちやほやされたい』という目的を一気に果たしてしまった後の自分が、これから何を求めてサイトを続けていけばいいのか。今さら捜そうにも、もう手遅れってこともちぃわかってる。なぜならアクセス数を追うことばかりに夢中になりすぎた結果、いつの間にか自分がこうありたいと思っていたサイトの位置や理想像からあまりにも遠ざかってしまったから。やり直したくてももう遅い。ちぃ大手の生活捨てられない。もう戻れない。
ちぃにとってテキストサイトって、何なのか。ちぃにはわからない。5万ヒットサイトにまでなった今でもわからない」
「そうだね、わからないね。テキストサイトを運営するってどういうことなのか。自分はそもそも何のためにテキストサイトを、誰に頼まれたわけでもなくわざわざ自分から金を払ってまでしてWebという共有空間にアップし公開しているのか。そんな馬鹿げたことを続けることの果てにいったい何を求めているのか。その問いの答えはきっと、全ての管理人が一人一人自分で考えて導き出すべきものなんでしょうね。あたしもそれについてはずっと考えてるし、ちぃちゃんだって今からでも考えられるんだよ。遅くなんかないよ。こうありたいと願うサイトの姿があるなら、いつだって今からだって少しずつ向かっていけるのよ。これから一緒に頑張ろうよ、ね?
ということで、これでめでたく『さくらとちぃのテキストサイト論』はおしまいです。
惜しんでくれる人が多くてほんとに嬉しいんですが、残念ながら今後この手のサイト論企画は二度とやる予定はありません。せめてこの駄企画のことを心のどこかで覚えていてくださればあたしたちは幸せです。たくさんの質問メールを送ってくれた方々、今まで応援してくださった皆さん、本当にどうもありがとうございました。日々の更新に励んでいる全てのテキストサイト管理人さんたちに『これからも頑張って下さい』の言葉を贈りつつ、この企画はこれにて終了とさせていただきます」
「わあ、最後だけ無理に話のスケール上げてごまかして終わらせようとしてる。CLAMPの漫画と一緒」
「うひゃあ、最後くらいカッコよく決めさせてくれよ〜!(エロパロ同人誌風フェードアウトで完)」



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