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「ほめこです…いよいよお別れの時が近づいてきてしまいました。せっかく皆さんとお知り合いになれたのに、淋しいです」
「ぱげこ、打ち上げは叙々苑がいいー」
「もう打ち上げの話かよ! しかも叙々苑かよ! たぶん打ち上げないぞ今回…クビになるっぽいから
「えーっ! ぱげこもう焼肉食べるって決めちゃった」
「一人で喰ってこい! ということで、いい加減質問いきましょうか。
『ネゲットは罪なんでしょうか?』
ハンドルネーム『ササキ』さんからです。ありがとうございます」
「ネゲットってネットで恋人作ることでしょ? ぱげこよくわかんないんだよね」
「あんた学校でアニオタにモテモテだもんね。別にわかんなくていいんじゃないの」
「だってさー、ネットって顔わかんないじゃん。会ってブサイクだったらどうしようとかみんな思わないの?」
「とりあえず一回会ってみる、ってとこから始まるのね。それで好みのタイプじゃなかった場合、次から『忙しくて』とかなんとかいってメールが来なくなる。ちくしょー、医者の跡取りと聞いて期待してたのにあのガキ!!」
「ふられたんだー」
「うるさい! まあとにかく、今のテキストサイトってネゲットはもう常識っつーか全然珍しいことじゃないわね。あのサイトもこのサイトも涼しい顔してみんな裏で女喰ってますから、信用しちゃだめですよー女の子たち。ネゲットは犯罪です! 淫行です!!」
「どうも私怨入ってるなぁ…まあいいやもう今さら。最後のメール行こうっと。
『テキストサイト運営に求められる、重要なことってなんなのでしょう?』
ハンドルネーム『Rolim』さんの質問です。ありがとうございますぅー」
「うん、最後にふさわしい質問ね。いいんじゃない。ちなみにぱげこは何だと思う?」
「テキストサイトに求められる重要なこと? なんだろう。技術?」
「技術なんかなくたって作れるよ…ていうかあんた技術ないのに作れてるじゃない」
「そういえばそうかも。じゃあ、向上心とか面白さとかそういうもの?」
「いいとこ突いてるけど、それはまだ『あるに越したことはないもの』ね。向上心がなくても面白味がなくてもテキストサイトはテキストサイト。持てと強制されることではないわ」
「うーんじゃなにを持てってことなんだろ…。あわかった、自宅前張ってる元族仲間を警察に通報して追い払ってくれる、騙しやすい彼氏だ」
だからその話はもうすんなって言ってるだろう!?
「アハハハハ、怒ってるおもしろーい。ねぇもう降参だよぅ、テキストサイト運営に求められるもの、そろそろ教えてよぅ」
「しょうがないなぁ…いいわ、教えてあげるわ。テキストサイト運営に求められるもの、それは愛よ」

「愛! お姉ちゃんの口から愛なんて言葉が出るとは」
「似合わなくて悪かったわねぇ。そう、テキストサイト運営に求められるいちばん重要なことは技術でも向上心でも面白さでもなく、愛よ。自分のサイトに対する愛、好きなサイトに対する愛、お客さんに対する愛。これらがなくしては続けていけないし、続けていくべきではない。逆にこれだけ持っていれば、例え技術が向上心が面白さがどれだけ足りなかろうと、あたしはあなたのサイトをテキストサイトとして認めるわ。ようこそと腕を広げて暖かく迎え入れるわ」
「うわっ、お姉ちゃんいつもと言ってることが違う…きもちわるー」
「うっせーな! 俺はまだこの業界で仕事続けてーんだよ! お前みてーにアルバイトの片手間にやってんじゃねーんだよ家賃かかってんだよ!」
「家賃なんかほとんど男に払ってもらってるくせに…」
「それとこれとは別! これからの女は自分で稼いでなんぼよ」
「なんだっていいんだけどさー、せめてもうウブな男の子そそのかして金づるにするのだけはやめたげなよ…お姉ちゃんとつきあった男、今年だけですでに3人手首切ってるじゃん
「そ、そんなこともあったかしら…ま、まあどうだっていいじゃないプライベートなことは! ぱげこちゃん焼肉食べたいのよね! あたしが打ち上げ連れてってあげるからここは少し黙ろうか!」
「わーい! 焼肉焼肉!」
「ということで、ほめことぱげこでお送りしてきました『テキストサイト論』はこれでめでたく終了ですが、皆様いかがでしたでしょうか。またこのような機会がありましたら、その時は私達もう一度皆様のお目にかかりたいと願っております。最後まで読んでくれて本当にどうもありがとうございました!」
「ねぇねぇ、あたしたち続投か降板かは視聴者アンケートで決めるって」
電波少年かよ!

※この文章は単行本「テキストサイト大全」の章の間に入っているミニコラムの元原稿です。
興味を持っていただけたようならぜひ購入の検討などよろしくお願いします。


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